Interview 横浜夢本舗

02 黒岩 秀典 Hidenori Kuroiwa [ 横浜夢本舗 ] オーナー

デパート催事の立役者たち-其の弐 「催事の現場には、夢と、仲間と、元気がつまっています」

インターネットショップの第一線で活躍してきた横浜夢本舗。10年以上心がけてきたのは常にお客様志向であること。 最もクレームの少ないネットショップとして「ベストサービス賞」を受けたこともあります。 催事販売を始めてからはネットショップの売り上げも増加したそうです。今回は横浜夢本舗のオーナー黒岩氏に人気の秘密をお聞きしました。

楽天市場「スイーツ部門」のパイオニアとして

--横浜夢本舗の立ち上げについて教えて下さい。 もともと兄の洋菓子の製造・卸を手伝っていました。しかし、「自分のブランドで勝負してみたい」という想いが強くなり、独立すると同時に楽天市場さんへ出店しました。10年前のことです。メディアに取り上げられたおかげもあって、電話注文が 1日100件、特にクリスマスの時期はホールで12000個も配送しました。すべてが手づくりでしたから、1週間ほど不眠不休の作業でした。注文のメールに一通一通手作業で返信したのを今でも鮮明に覚えています。 --人気の秘密は何だと思われますか。 まず、商品開発には徹底的にこだわりました。ネットショップというのは、実際の店舗よりも少ない情報の中でお客様にご購入頂くわけですから、いかにわかりやすく、いかに品質を感じて頂けるか研究し尽くしました。当時も今も一貫しているのが「全商品無添加」という点です。 そして心を込めたサービスだと思います。通販サイトでスイーツ部門のMVPを、パソコンとモバイル両方で獲得したのですが一番嬉しかったのは「ベストサービス賞」です。最もクレームの少ないネットショップとして表彰されました。お客様に心が通じた成果ですから、今も大事に飾ってあります。

出店場所、商品開発・・・こだわりが「今」をつくった

--池袋に続いて横浜に出店されましたね。 はい。自分の商品には自信がありましたから、やはりスイーツの激戦区で腕試しをしたかったというのがあります。出店してから1年8ヶ月になりますが、おかげさまで常連のお客様もたくさん増えて、ほっと一息といったところです。お客様も舌が肥えていらっしゃるので、こちらも手は抜けません。 --「窯焼きチーズケーキ」がすごい人気ですね。 横浜港開港150周年にちなんで、ある物語を考えたのが「窯焼きチーズケーキ」誕生のきっかけでした。独自の「湯せん焼き」で濃厚な味わいを出すことが出来ました。手がかかるのですが、今では催事のヒット商品です。物産展では1日平均500個は売れますね。 --秋には新商品も出るそうですが。 はい。お米の粉を使ったロールケーキを開発中です。まだ試行錯誤の段階で、店舗でしか販売はしていないのですが、お客様の反応は上々です。催事には秋から登場させますので、楽しみにしていて下さい。

催事販売は「商売の原点」を見つめ直させてくれる場所

--催事販売に出店することになったきっかけを教えてください。 実は「銀座みもざ館」の渋谷社長から、催事.JPの運営会社「株式会社かねもり」の森田さんに引き合わせてもらったんです。2年前になります。横浜に本店を構えたのは「催事に出店するからには店舗がなくてはならない」という規定も理由の一つでした。渋谷社長とは楽天時代からのライバルなのですが、色々と教えてもらいました。 --催事販売とは、黒岩社長にとってどんな場所ですか。 催事は、私にとって「商売の原点」です。通信販売時代からずっと「お客様志向」を心がけてきましたが、やはり「対面販売」の難しさや楽しさというのは、やってみてはじめて分かることも多かったです。でもネットショップも催事販売も原点は同じだということに気づきました。宅配便でお客様宅にお届けしていたのが「街までお届けにあがる」に変わっただけなんです。 今でこそ事務所での業務が多い私ですが、元気がほしい時は催事の現場に行って、社員と一緒にお客様の前に立ちます。お客様の笑顔を見るのが、何よりの活力になりますし、催事.JPではライバルも同じチームの仲間なので、楽しみながらやらせてもらっています。

催事販売には夢がある

--ネットショップと催事販売の違いを教えて下さい。 最近は楽天さんのようなネットショップでも規模の大きいお店が有利になってきました。昔と違って、広告費など毎月かなりの金額を投入できる中堅企業さんクラスじゃないと、運転資金がまわらない状況です。今は資金のない方が参入しても、まず売上を上げるのは不可能でしょう。 --催事販売の魅力は何でしょうか。 催事販売は特に広告費もかかりませんし、催事発のヒット商品も続々と登場しています。夢がありますよね。僕らがネットショップを開設した頃のような、ポテンシャルを感じます。売ること自体が宣伝になるというのも魅力です。最近はお客様から「ネットショップでも購入しています」というありがたい声を聞くことも多くなりました。実際に催事販売を始めてから、ネットショップの売上げも伸びています。

取材後記

通信販売からはじめて、店舗や催事でも活躍されている黒岩社長。優しい笑顔の奥に、常に第一線で勝負してきた厳しさと重みを感じました。今でも月に2回はメディアが取材に来るそうですが、人気にあぐらをかかずに「お客様の笑顔」にこだわる姿勢からは本物の風格を感じました。 試食のことを催事の業界用語で「宣伝販売」といいます。お店と味を知ってもらい、商品を選んで頂く催事販売は「広告の場」であり「販売の場」でもあります。ネットショップではどうしても伝えられない商品の味、匂い、雰囲気、熱気をお客様と共有できる催事販売は、ネット社会と言われる現代において最も必要な販売チャネルなのではないでしょうか。

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